二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 ここで、ダグラスにはいくつか選択肢があった。
 一、このまま広瀬乃亜の唇を食い尽して、未開の原始人さながらに彼女をさらい、自分の部屋に閉じ込めて明日の陽が昇るまで抱き尽すこと。
 二、全速力でここから走り去り、冷水を浴びてこの怒りと下半身の猛りを鎮めること──多分、湖の水を全部使えば、なんとかなるだろう。
 三、…………。

 ダグラスは乃亜をぎゅっと抱きしめると、三番目の最も難しい選択をした。

「ノア、聞いてくれ……誰も君が清いことを笑ったりはしていない。素晴らしいことだ。君がなにかを証明する必要はないんだよ」
「で、でも──」

 よせばいいのに、乃亜はそっとダグラスを抱き返してくる。ダグラスはそれに応えたくてさらに腕に力を入れた。
 ──離れろ。今すぐ。離れろ! この汚い腕で乃亜に触れるな!
 しかし乃亜はすでに屍となっているダグラスの理性が納まっている棺に、最後の釘を打ち込んできた。

「したいと思ったんです、あなたにキスを。そうしたら急に欲しいって本当に言うから……浮かれて……させてもらったの。こんなふうに嫌がられるとは思ってなかったから……」
 ──やめろ。謝るな、乃亜。あやまらないでくれ!
「ごめんなさい……」
 乃亜の声が震える。

 たとえ目で見なくても、彼女の瞳に涙が浮かんでいるのはわかった。
 ああ……もういっそ……ダグラスも一緒になって泣きたかった。

 呪われた過去を忘れて。自らが選んだ運命に背を向けて。今、このときまで待った、一生に一度の恋に身を捧げたい。
 しかしそれは許されなくて、許すこともできなくて、なによりも乃亜をこの闇に引きずり込むわけにはいかなかった。

「謝るな。それから、泣かないでくれ」
「うっ、うぅ……」
「だから。ノア、泣かないでくれ。嬉しかったよ。たとえ頬へのキスでも君のはじめてを俺にくれたなら、俺にとっては素晴らしい……最高の……思い出だ」
 と言ってから、あることに気がついて、ほんの少し距離を取って乃亜の顔を両手に包む。
「はじめて……でいいのか? 頬くらいは、他の男にも許したことがあるとか?」
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