二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 乃亜はふるふると首を横に振った。
 ダグラスは心からの安堵を感じて、そんな自分がさらに信じられなくなった──頬へのキスだぞ、ダグラス・ジョンソン・マクブライト。本気か?

 乃亜はダグラスの腕の中にいる。
 涙を浮かべてダグラスを見つめながら、なにかを求めるようにうっすらと唇を開いている。ダグラスはこの唇に自分のそれを重ねたかった。優しくついばむように触れることも考えたし、息を奪うほど激しく奪うことも考えた。
 ──やめろ。

「あ……」
 ダグラスは目蓋を伏せて、乃亜の頬に唇を寄せると、そこに彼女から受けた一瞬の短いキスよりも少しだけ長いキスで柔らかい肌を吸った。

 これくらいは……許されるだろう。
 許されないとしても、せめてこれくらいは魂に刻みたかった。

「ダグラス……?」
「ここまでだ……ノア」
「どうして?」

 どうして……。ああ、どうしてだろうな。
 答えはダグラスも知りたかった。
 もうとっくの昔にすべてを諦めたはずだったのに、乃亜、どうして君が今になってこの牧場に現れなければならなかったんだ……と。
 この春の安息の地に。
 叶わなかった愛の彼方に。

「俺では君を幸せにできないから……君には『ハルコ』になってほしくない。だったら、俺たちはなにもはじめるべきじゃない」

 それでも──ダグラスがウィリアム同様になる未来は、もう決まっているのかもしれない。
 この同じ土地で。
 同じ女性と血の繋がった女を想って、悠久に思えるような時間を、独りただ雄大な空虚を見つめて生きるだけの未来が。
 
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