二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
マクブライト邸のキッチンにひとりで立ちながら、乃亜は静かにハンバーグのタネを混ぜていた。付け合わせのベイクドポテトはすでに立派な巨大オーブンでいい感じに匂いをくゆらせはじめていたけれど、ついにお米が恋しくなってきた乃亜は別途鍋でライスも炊いている。
(君には『ハルコ』になって欲しくない……か)
乃亜の手がぴたりと止まる。
あれは半時間ほど前の出来事だった。
乃亜は半裸の推しに壁ドンされた──身も蓋もない言い方をしてしまうと、それがわかりやすい状況説明だった。
そして振られた。
色々複雑な事情をほのめかしてはいたけれど、結局はそういうことなんだろう……。そもそも告白したわけではないけれど。
告白さえする前に、「するな」と言われた形なわけで。
あのあと、ダグラスはいつものフランネルシャツを素肌の上に羽織ると弾丸のような勢いで玄関から出ていってしまったきりなので、今どこでなにをしているのかはわからない。
(最高の思い出……なんて、嘘、だよね……。わたしを慰めたくて言った、方便)
乃亜はすでにダグラスの過去の片鱗を聞いてしまったから、彼にはなにか……まだ知らない闇のような……事情のようなものを抱えているのを、なんとなく察してはいる。
でも、どんな事情があっても、結果が同じならなんの違いがあるだろう。
時代は変わった。
当時の曾祖母のような貧困は乃亜にはないし、太平洋を渡ることだって、国際恋愛や……国際結婚でさえ、ウィリアムたちの頃よりずっと楽になっている。だからそれを言い訳にするなんておかしい。
やっぱり、ただ乃亜を遠ざけるための口実なんだ。
(泣かない……っ)
なんとか己を律して手作業を再開すると、乃亜はスプリング・ヘイブン牧場のカウボーイたちの腹を満たすべく、無心に料理を続けた。