二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「な、なんですか?」
「このあと、ネイトと本当にピエドラ川に行くのか?」
「行きますよ……。ただ、予定よりちょっと出発が遅くなりそうなんです。乗馬レッスンの参加者が少し時間をずらして欲しいと、今さっき連絡してきたらしくて」
と言って、乃亜は天然石のキッチンカウンターの上に乗ったスマホを顎で示した。
なんの変哲もないスマホだ。
しかし、これでネイトが乃亜と繋がっているのかと思うと、ひと思いに叩き壊してやりたくなった。なんたる野蛮人的発想……。
そこで、ダグラスはあるひとつの事実に気がついた。
──なぜネイト・モンゴメリーはダグラスの知らないところで乃亜とやり取りをしている? 乃亜が奴の番号を知っているからだ、馬鹿野郎!
ダグラスは乃亜のスマホをカウンターから奪った。
「なっ、ダグラス?」
幸い、乃亜はロックスクリーンを設定していなかった。ダグラスは自分の番号を打ち込むと通話ボタンを押し、そして、切った。
「今のが俺の番号だ」
「え……えぇ?」
「なにかあったら」──なくても──「この番号に連絡するんだ」
「それは……えっと、はい……」
ダグラスはコーヒーを淹れ終わるとそれを一気に飲み干して、時間を確認する。午前七時半。長い一日になりそうだった。
「俺は厩舎で仕事をすませてからすぐ戻ってくる」
「はあ」
「もしなにかあったら」──なくてもだ、畜生──「さっきの番号に連絡するんだ」
「はい」
「俺が戻ってくるまで、フライパンで怪我をしないようにしてくれ」
乃亜はやっと微笑んだ。「大丈夫ですよ」
「じゃあ」
なにが『じゃあ』だ、ダグラス。お前は老人か。
そんな自分への苦言を呈しつつ、ダグラスは乃亜の切っていたトマトをひと欠片つまみ食いすると、カウボーイハットを手に取り、ピックアップトラックの鍵を持って玄関を出た。
もはや自分がなにをしているのか……どこへ向かっているのか……わからないまま愛車にエンジンをかけた。