二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
最初はすべてうまくいっていた。
……と、思う。
天気はよかったし、装備も完璧だったし、目の前には息を飲むような大自然が広がっている。なによりも乃亜のスマホにはダグラスの番号があった。ほら、完璧でしょう?
乃亜の目指すピエドラ川のトレッキングコースには、三マイルという表示があった。つまり五キロ弱である。
歩いて歩けない距離ではない。
しかも出発点と到着点が同じ、周回するタイプのコースだ。
途中に川沿いに出て、その川には自然の温泉が注ぎ込んでいるそうだ。ひとが浸かれるように岩場の一部が整備されているおまけ付きで、中には水着姿になって浸かるひともいるらしいが、乃亜は足湯のようなことをして満足するつもりでいた。
だから水着の類は持ってきていない。
サンダーストームについて調べてみると、やはり日本の夕立と同じ仕組みで、主に暑い日の夕方辺りに集中して降る雷雨とあった。
ただちょっと規模が大きく、時々竜巻を伴うとのことだった。
(でも時間的にまだ早いし、大丈夫なはず……傘もあるし)
リュックを背負い直すと、乃亜は小道を進みはじめた。
舗装された道はなく、ただ歩きやすいように均されただけという感じの地面で、見上げてもてっぺんが見えないような背の高い木々が多く林立している。
ちょっと尋常ではない数値のマイナスイオンに包まれて、乃亜は大きく息を吸った。最高に気持ちいい。空気が澄みすぎていて肺が痛いくらいだ。
牧場から離れて。
春子とウィリアムのことも、ダグラスも、ネイトやマリアナのことも忘れて、一刻だけ。
乃亜はひとりで考えたかった。
否、ひとりで、なにも考えずに心を落ち着けたかった。
スプリング・ヘイブン牧場に着いてから……特にここ数日は、ジェットコースターのように感情を振り回されて、少し休息が必要だった。