二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「ふぅ……」
結局、ネイトがこのトレッキングを延期したいと言い出したのは、乃亜にとって渡りに船だった。ひとりになれた上に、罪の意識のあるネイトは出発点まで乃亜を車で送ってくれたのだから。
「この点は本当に不便よね……。またレンタカー借りるべきかな」
最初に仲の良さそうな老夫婦とすれ違った以外、トレッキングコースにひとの気配はなくて、乃亜は独り言をぶつぶつつぶやいてしまう。
帰りはネイトに連絡すればまた迎えに来てくれると言っていたけれど……。
乃亜はリュックのポケットに入れてあったスマホを取り出した。
──時刻はすでに正午過ぎ。
電波はあったり、なかったりで怪しい。実際今はない。でも……。
「あ……」
ある。
ダグラスからいくつかメッセージが入っていた。日本で普及している某アプリはここアメリカではあまりポピュラーではなく、同類の別アプリではあるが、使い方はほぼ同じだ。
『どこにいる?』
が、ひとつ目のメッセージだった。
すごい直球一直線……。
『ど・こ・に・い・る?』
ふたつ目。まったく同じ文章が大文字で綴られていた。ひとつ目のメッセージから一分後の送信だった。
『ノア、返事をしてくれ』
その五分後。まだダグラスにはプリーズという単語を使う余裕があった。
『返事をしろ、ノア。無事か?』
その三分後には命令形に進化していた。……そうでしょうとも。
乃亜だって返信できるものならしたいけれど、電波がなければどうしようもない。とりあえず、
『大丈夫です。トレッキングコースを歩いています。まだ川には着いていません』
……とシンプルな文章を打ち、送信してみる。これで電波が復活したら自動的に送ってくれるはずだ。多分。そう信じたい。
乃亜は目の前の小道をさらに進んだ。