二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
* *
甘かった。すべてが甘かった。
うまくいっているときほど用心しろという先人の教えは正しかったのだ。
まず、小道の途中に倒れた木の株が転がっていて、景色に気を取られていた乃亜は派手に転んだ。これが皮切り。
小道の途中に、どちらに進路を取っていいかわからない曖昧な分かれ道があった。
電波はなかったのでネットにあった経路図には頼れない。スクショをしておかなかった迂闊さを後悔したが、あとの祭り。
転んだときの膝の傷が痛かったせいか、ちょっと投げやりな気分だった乃亜は、曖昧な記憶を手掛かりにとりあえず、ふたつあるうちの太めの道を選んだ。
おそらく、やってはいけないことだった。
後悔先に立たず。
気がつくと乃亜の進んでいた道は徐々に切れて、ただの森になっていた。
(どうしよう……。とにかく、戻るべきよね)
乃亜はさっきの分かれ道まで戻る決意をした。実際、途中くらいまでは戻った。そこで例のサンダーストームがコロラドの空を覆ったのだ。
大丈夫、と自分に言い聞かせて、乃亜は持ってきた折り畳み傘を出した。おそらくすぐにやんでくれるはず。
しかし乃亜の楽観はまたも当たらなかった。
そして乃亜はひとつの真実を学んだ。字面を信じろ、というものだ。乃亜の目の前にあるものは夕立なんかじゃなく、まさにサンダーとストームだった。
雷鳴と嵐。
東京からはるばる持ってきた折り畳み傘は五分と持たず、横なぶりの風に吹き飛ばされてどこかへ消えてしまった。
小道に舗装はないから、雨に濡れるとただのぬかるみになる。
それでも地盤が固いせいか、すぐには足を取られなかった。その分、雨水が流れてくると滑りやすくなる。乃亜は雨宿りを求めて少し進んでみたが、何度も転んでそれどころではなかった。
──『なにかあったら』……と、ダグラスの言葉を思い出した。『この番号に連絡するんだ』と。