二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「うぅ……」
 涙さえ雨に流される中、乃亜はすでに濡れてしまっているスマホに手を伸ばした。
「え!」
 なんと、少しだけだけど電波がある。
 おまけにダグラスからのメッセージがまた来ていた。じゅ……十九件の。すべて読み込んでいる余裕はなくて、いつまた電波が切れるかもわからないから、乃亜は通話ボタンを押して通じることを祈った。
 ダグラスが出たのは二秒後だった。

『ノア! くそ、やっと繋がった! どこにいるんだ!?』
「あ……」
 嬉しくて喉が詰まり、すぐには声が出せなかった。
『ノア、どこにいるんだ? 無事なのか?』
「は、はい……」寒さで声が震える。
『まだピエドラへの道中にいるのか?』
「多分……。で、でも……途中で道を間違えたかもしれないんです……。分かれ道があって……」
『もう少し詳しく説明してくれ。その分かれ道は川に辿り着く手前なんだな?』
「はい……。その少し前に、倒れた木の幹がありました……。それで転んで……」
『転んだ!?』
 ちょっと耳が痛くなるくらいのダグラスの叫びを聞いた。『大丈夫なのか?』

 誰かに心配されるということが、こんなに心地よかったことはない。乃亜はダグラスの声のありがたさにスマホをぎゅっと握った。甘えたくなる。

「大丈夫です。でも、どうしよう……」
『俺が行くからそこを動かないでくれ。いいな? 平坦に見えるがいくつか小さな岩の崖がある。特に雨だと滑りやすい。絶対に動くな。すぐに迎えに行くから』
「はい。ありが──」
 と、言いかけたときに、地面が揺れた。

 同時に耳をつんざくような雷鳴がとどろき、足元が割れたのかと思うほどの振動があって、身体中の毛が逆立った。

 心臓が止まるかと思った……。
 その数秒後に、メリメリという不気味な音を立てて、乃亜から数十メートル先に立っていた巨木がゆがみ……そしてドォンと倒れた。
 幸い乃亜がいる場所とは違う方向に倒れてくれたが、もし頭上に直撃でもしていたら生存の可能性はなかっただろう。
 あまりのショックに乃亜はおそらく一分くらい意識を飛ばしていた。

 ハッと我に返ってスマホを確認すると、ダグラスとの通話は切れていて、電波も再び途絶えていた。

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