二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
動くな、とダグラスが言ったから、乃亜はその場にうずくまって彼が来るのを待った。
あの落雷を最後に雨は少しずつ弱まっている気がしたけれど、地面のぬかるみはひどくなっていくばかりだ。ダグラスは本当にこんな雨の中、迎えに来てくれるのだろうか? 乃亜が危ないのと同じくらい、ダグラスだって危ないのでは?
最初に膨らんだ希望は、待っている間にゆっくり静かにしぼんでいって、乃亜は希望を手放しそうになった……そのとき。
乃亜は誰かが自分の名前を遠くから呼ぶのを聞いた。
──ノア!
何度も、何度も。
雨音にかき消された木霊のような響きが、次第に大きくなっていく。幻聴かと思いはじめたそれが、はっきりした現実の音に変わっていった。
「ダ──ダグラス!」
乃亜は叫んだ。
そこからは早かった。ダグラスはもう一度だけ乃亜の名前を叫んだあと、真っ直ぐにこちらに向かって速足で近づいてくる。
雨に白む視界の先にダグラスの姿が見えたとき、乃亜は立ち上がった。
ダグラスは背負っていたなにかを地面に投げ捨てて、乃亜のために駆けだした。
なにをするべきかは本能が教えてくれた。
乃亜は両手を広げて、彼のすべてを受け入れた。
濡れたふたつの身体がひとつに抱き合って、雨が、風が、遠くにまだ響く雷鳴さえが、ふたりの間には無くなっていた。
そして、乃亜は生まれてはじめての口づけをしていた。