二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「川は逃げないよ。滑るから走らないでくれ」
背後からダグラスの声がやんわりと忠告する。
実際、ひと気はまったくなくて貸し切り状態で、午後ではあるがまだ日の入りを心配するほどの時間ではない。
温泉が湧いているところに山からの水流が流れ込み、ちょうどいい具合の温度の露天風呂的なスポットが川縁に点在するという、夢のような場所だった。
「入ってもいいんですよね?」
念のために乃亜が聞くと、ダグラスはうなずきながらも顔をしかめた。
「ネイトと一緒に入るつもりだったのか?」
「え? ええ、もちろん。自分だけっていうわけにはいかないでしょう」
「…………」
「足湯だけのつもりでしたけど。水着は持ってきてないので」
「ああ……なるほど」
なる……ほど……?
乃亜が先に川縁に近づくと、ダグラスはその後ろをついてくる。大きな岩や角ばった石が多く、乃亜はその上をぴょんぴょんと跳ねるようにして渡った。
ちょうどいい具合に湯気の出ている大きな石に囲まれた温泉があったので、縁の岩にしゃがみこんで手を浸けると温度を調べた。
「気持ちいい! 本当に温泉だぁ!」
乃亜は日本語で感嘆した。ダグラスは肩をすくめながら乃亜の隣に来る。
「気に入ったのか?」
「もちろんです! ここに座ってもいいですか?」
「どうぞ。うちの敷地内でもあるまいし、別に俺に許可を求める必要はないよ」
確かに。
ずっと牧場内で生活していたので、土地からキャビンから邸宅のキッチンに至るまですべてがダグラスのものであることに慣れすぎていた。でもここは国立公園の一角だ。
主人と客でも、牧場主と臨時の雇われ人でもない。
ただ一緒に自然の中を旅するふたり……。
少なくとも乃亜はそう思いたかった。