二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 とりあえず乃亜は座って靴を脱ぐと、ジーンズを膝までめくって足先を温泉のお湯に入れた。さすがのダグラスの荷物にも靴はなかったので、濡れたものをずっと履いて歩いていたから、生き返るような心地だった。

「気持ちいい……」
 ダグラスは乃亜のすぐ隣に腰を下ろしたけれど、乃亜のように足を浸けようとはしなかった。かわりに彼の視線は乃亜の膝辺りをじっと凝視している。

「そこは……怪我をしたのか?」
「え」

 言われてはじめて、乃亜は自分の膝に目をやって、そこに擦り傷がついているのを発見した。最初に派手に転んだときの怪我だろう。
 出血はすでに止まっていたが、まだ赤い痕が生々しい。自分でも思わず顔をしかめてしまったから、心配性のダグラスがどんな反応をするのか想像するとちょっと怖かった。

「大丈夫で──ひゃあっ」
 ダグラスの頭が下がってきて、膝小僧の上にちゅっと唇を寄せた。

 嫌だったわけではないけど、驚いて思わずダグラスを温泉の中に突き落としそうになった。彼を押そうとした勢いで、逆に自分の身体の方が岩から落ちそうになる──ところを、彼の腕が救ってくれた。

「落ちないでくれ」
 と、静かに言って、乃亜を抱きかかえたまま膝の擦り傷を指先で慎重に振れる。「消毒しないと」
「じゃ、じゃあ……急に唇を寄せたりしないでくださいっ」
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