二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 乃亜は目の前の男性をまじまじと見つめた。
 さっきキスまでしてしまったひとなのに、知らないことだらけだ……。もちろんそれはダグラスにとっての乃亜も同じだろうけれど、多分レベルが違う。
 そういえば、フライパンでおでこをぶつけたときのダグラスの心配の仕方も、ある意味玄人だった。

「すごいですね……」
 他に言いようがなくて、乃亜は素直な感想を口にした。
「別にすごいことはひとつもないよ。ただ、君はよく怪我をするようだから、便利(ハンディ―)な技能ではあるんだろうな」

 ──もし、一緒に暮らすなら。
 そう彼の口から出かかったと感じたのは、乃亜の妄想だろうか。
 ダグラスはすでに姿勢を正してしまったので、彼の顔を見ようと思ったらまた見上げなければいけない。

 ふたりはしばらく見つめ合ったけれど、乃亜はなんと言っていいかわからないまま。ダグラスもまたなにも語らなかったので、乃亜は視線を足元に落とした。
 ふたりの胸中がどんなに乱れていようと、自然は不変で、普遍で、ときは止まってくれない。
 キスまでしたのに。
 なんだか逆に距離ができてしまったみたいで、お湯に浸かった足をプラプラと揺らして、その波が作る水面の波紋を無心に見つめた。

 乃亜を『ハルコ』にはしたくないから、ふたりはなにもはじめるべきじゃない……のだ。ダグラスによれば。
 なんだか泣きたい。

「ノア」
 ダグラスの声に乃亜は顔を上げた。
 彼は乃亜が視線を外していた間も、ずっと乃亜を──乃亜だけを──見ていたみたいだった。

「俺が……俺たちが、これ以上先に進まない理由を、俺が君を欲していないからだとは思わないでくれ」
 なに……を?
「ダグラス……」
「俺がこのまま君を抱かないからといって、そうしたくないわけじゃない。俺の心はもう決まっている。そして俺は、一度決めたものを覆したりはしない」
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