二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「ダグラス、わたし……」
「別に君からの答えや言葉を期待してるわけじゃないよ。俺にその資格はないことくらいわかっているし、ずいぶんと卑怯な告白をしている自覚もある。だから、なにも言わなくていい」
「でも」
「それでも、もしひとつ聞かせてもらえるなら──」ダグラスの指が乃亜の前髪に触れて、そっと耳に後れ毛を掛けた。「君の心はまだあの阿呆なシェフにあるのかどうか知りたい」
乃亜はぷっと短く笑った。
「そんなひともいましたね。もう忘れました」
ダグラスは満足げに微笑んだ。
「ネイトは?」
「あのひとはわたしをここに置いて、今頃、綺麗な金髪のお姉さんと乗馬してるんですよ? 論外です」
「あいつは馬鹿だよ」
ダグラスは静かに告げた。乃亜も静かに首を横に振る。
乃亜はしばらく足湯を楽しんでいたが、雷雨の名残か風が吹くと肌寒くなって何度かくしゃみをしてしまった。
「そろそろ帰ろう」
ダグラスの大きな手が乃亜の背中をさすった。
身体の芯の、そのさらに奥にある誰にも触れられたことのない場所が、ポッと火がついたように熱くなる。
「はい……。でも、あの」
「ん?」
「また来たいです。今度はゆっくり、天気のいいときに。そのときは……一緒に来てくれますか?」
数秒の沈黙のあと、ダグラスはうなずいた。
「もちろん」
──いつか。
いつかこんな曖昧な関係ではなくて、想いを確かめ合ったふたりがこの道を一緒に歩く日がくるだろうか。
そんな疑問を抱えながら、乃亜はその午後、ダグラスと共にピエドラ川の小道を歩き終えた。