二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ダグラスの『殺してやる』発言を恐れてか、今晩ネイトはここでは食事をしないと連絡してきて、自宅に帰ってしまった。しかしすでに他の者は揃っているのに、乃亜だけは来ない。
これまで乃亜は、たとえ調理当番でなくても先に来て談笑したりテーブル周りを手伝ったりしていたから、彼女の存在がないだけですべてが灰色に見えてくる。
重症だった。
「呼びに行ってくるよ。先に食いはじめていてくれ」
そう言い残して、ダグラスは玄関を出た。
キャビンに着くまでに一度乃亜に通話を試みてみたが、彼女は答えず。シャワーを浴びている……もしくは本当に深く眠りに落ちてしまっている可能性を考えて、あまりしつこくは掛けなかった。一時間近く雨に打たれた上に、あれだけ歩いたあとで、疲れているのは当然だ。
しかし、すでに日が落ちているのに、乃亜のキャビンは完全に暗闇だった。
普段の乃亜は、夕方以降になると玄関口の電灯だけは必ずつけておく。なにかがおかしい気がしてダグラスの足は急いた。
「ノア? 起きているのか?」
玄関の扉まで辿り着くと、ダグラスは軽く数回ノックした。
が、沈黙。
ダグラスは同じことを繰り返したが、無反応は変わらなかった。寝ているにしても、ここには今夜、ほとんど食料がないことは知っている(ネイトが勝手に届けたりしたのでなければ)。
実際、乃亜は別れ際、じゃあ夕食で……と言っていた。
「ノア、返事をしてくれ。なにかあったのか?」
またしても沈黙。
これまでダグラスが広瀬乃亜について学んだもののひとつに、この女性は放っておくとなにか危ないことをしている可能性が高い、というものがあった。
ダグラスは再度扉をノックした……というよりも、叩いた。
「ノア! 返事をしてくれ! 出てきたくなければ声を聞かせてくれるだけでいい!」
そこから続く三度目の沈黙に、ダグラスは耐えられなくなった。扉に顔を寄せて、キャビンの中に声が響くようにして告げた。
「これから十数える。返事がなかったら扉を破らせてもらう。一……二……」
三……。
四、五……。
七まで数えたところで、かすかな物音がキャビンの中から聞こえた。続いて小さな足音。ダグラスは安堵して「ノア?」ともう一度だけささやいた。
かちゃり、かちゃりと内側から鍵を開けようとする音が響く。よく考えればダグラスはスペアキーを持っていたのに、頭に血が上っていてそれどころではなかった。
たっぷり数秒後、扉はゆっくりと開いた。