二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
君を愛せない理由
二日後、熱が引いて風邪が治ると、またいつも通りの牧場での生活が戻ってきた。
──大抵のことにおいては。
でも、乃亜の立場は明らかに変わってきている。実際になにかを宣言したわけではないけれど、牧場の人間は皆、まるで乃亜が「ダグラスの女」であるかのような扱いをした。
ダグラスも特にそれを否定したりしない。
そして寝込んでいる二日の間に、乃亜の荷物はほとんどがキャビンからマクブライト邸に運び込まれてしまっていた。
(でも……えっと……付き合っているわけじゃ、ないのよ、ね?)
誰かにそう聞いて、事実確認をしたいくらいだった。自分でも……もしかしたらダグラス本人も、まだこの関係を持て余していて、はっきりしない。
とはいえ丸二日も彼の部屋を占拠して甲斐甲斐しく看病されていたのだから、まぁ……他人から見たら彼氏彼女……恋人同士……夫婦……そんなものに見えるのかもしれない。
(って、最後のだけは余計だから! いくらなんでも!!)
久しぶりに朝のケータリングに復帰して、この日はなんと六件入ったオーダーを供し終えたあと、乃亜はダイニングテーブルでゆっくりコーヒーを啜っていた。
本来なら看病のお礼として豪華な朝食を作ってあげたかったけど、今朝のダグラスはまた牛の出産があるとかで、作り途中のホットケーキをつまみ食いしただけで出ていってしまったきりだ。
でも……。
「どうしよう……かな」
乃亜の手元にはダグラスのピックアップトラックの鍵があった。
料理の仕事が終わったあと、もし見たかったらおいでと誘われて、乃亜の移動手段として残してくれたものだ。ダグラス本人はホセのもっと古いトラックで一緒に行ってしまった。
多分、彼らカウボーイにとって、牛の出産に立ち会わないかと誰かを誘うのは、乃亜のような一般人が想像する以上に大きな意味がある。もしかしたら世界に向けて愛を叫ばれるより、さらに深い信頼と愛情が、そこにはあるのだ。
多分、だけど。あくまでも。
でもそんな彼らの精神構造を理解しはじめたくらいには、乃亜はスプリング・ヘイブン牧場に馴染みはじめていた。
意を決した乃亜は、数人分のホットケーキや摘まみやすく切ったフルーツをタッパーに詰めると、牛の厩舎へ向かうことにした。