二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
彼はまっすぐだった。移り気なところはひとつもなく、生真面目すぎるくらいに春子を大事に扱ってくれた。
巷には異国の兵隊に弄ばれた子女の話が溢れているし、こちらの女も、一夜の慰みと少しばかりの食料のために彼らを利用することがある。
それが現実だった。
でも彼は違う。
少なくとも、違うと、春子は思っている。
そう思いたいだけかもしれないけれど。
コオロギの鳴き声が遠くから聞こえて、残暑の夜に風情を加える。ひと気のない川べりで、大きな満月と水面に映る光だけが頼りの中、彫りの深い彼の輪郭がさらに際立っていた。
『ころらど……。きっと連れていってくださいね。いつか』
春子は微笑んだ。
『いつか必ず。そう遠くない将来に』
誓いを立てるように、彼は軍帽のツバをクイっとわずかに持ち上げた。
軍服の胸元にはいくつかの立派な階級章がある。ばっじ、というらしい。本人は大した階級ではないと言っているが、どうだろう。
満月に視線を戻した彼は、再びつぶやいた。
『月の綺麗な夜ですね』
確かに美しいけれど、こうしてふたりきりでいるのに、彼が褒めるのは春子ではなくて月ばかり。
春子は少しふくれて『そうですね』とだけ答えた。
彼の頬が赤く火照っているのに、そのときは気づけなかった。