二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
いつか、という彼の口約束にすべてを託せるほど、春子は夢見がちではなかった。
家に帰れば腹を空かせたふたりの弟がいる。生活は苦しく、母親は毎月のように仕事を変えなければならなかったから多忙で、父親は……多分もう帰ってこない。
(でも、会えば会うほど、想いは募るばかり……)
日中、春子は家事に明け暮れて、弟達が眠りにつき母親が帰宅するとやっと、彼と一緒に川縁の散歩をする日々を送った。
名前をウィリアムという。
終戦後、春子の生まれ育った港町に大挙してやってきた米兵のひとりだ。
春子はなぜか生まれつき耳がよく、少し学校でかじっただけの英語がひとより上手くできた。だから、米兵相手に困っていた近所のひとのために通訳の真似事をしてあげたのがきっかけで、ウィリアムと出会った。
名前を聞かれたので春子と答えると、彼はハル、コ、とボソボソと反芻した。
「チャイルド・オブ・スプリング」
春子が知っているよりも少し伸びのある発音で、彼はつぶやいた。
『え?』
『あなたの名前の意味。ハルコ。日本語で、春の子供という意味では?』
『え、ええ……その通りです。この場合は、子供というより、女という意味だと思いますけど……』
日本語に興味を持つ兵隊さんは少ないから、春子は新鮮な驚きを感じた。
英語を必死に勉強する日本人はいても、逆はあまりいない。そもそも、彼らは一時的にここにいるだけで、永遠に居座り続けるわけではない……はずだ。
そんな米兵にはめずらしく日本を知りたがるウィリアムと、できるならもう少し英語を磨いて有利な職を見つけたいと望む春子が、文化交流を名目に頻繁に会うようになるのにあまり時間はかからなかった。
そして今に至る。