二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「痛そう……」
「自然に出産させることもできるが、母子ともに長く苦しむだけでリスクも上がる。だから俺たちが引っ張り出してサポートするんだ」
「なるほど。わかりました」
気絶しませんようにと乃亜は心の奥で祈った。
「結構な割合で、仔牛は最初息をしない。そうなったら蘇生させる必要がある。ゆすったり撫でたり、場合によっては叩いたり」
乃亜はなんとかうなずいた。
ごめんなさい、やっぱりやめますとはもう言えない。言いたいけど。
「さあ、いくぞ」
え、もう? 本当にいきなり本番?
ダグラスは手が滑らないようにロープ回りに干し草を沢山撒いて、乃亜にその先端を手渡してきた。これを全力で引っ張ればいいのよね? それだけよね?
頑張り……ます!
ダグラスがぐっと全身に力というか、気合を入れたのに合わせて、乃亜はとにかく無心でロープを引っ張った。最初は強い引っ掛かりがあって、すぐには動かなかった。でも数秒後、なんともいえないぬるりという感覚が手に伝わって、乃亜はロープごと後ろに倒れた。
そして干し草の上にどさりと落ちる重いものと、沢山の体液、血のような匂い、牝牛の鳴き声……。
「よし」
肩で息をしながら、乃亜はその重いものを見た。
茶色のような緑のような、淡い青みをおびた不思議な色の粘膜に包まれた生まれたばかりの仔牛がそこにはいた。
動かない。
「どうしよう、どうしよう……これ、大丈夫なの? なにかしないと……」
「ホセがタオルを持っているはずだ。もらってきてくれ」
「はいっ」