二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
そして午後に差し掛かり、例の母子の経過も順調ということで、ダグラスと乃亜は厩舎をあとにした。
ピックアップトラックに乗ったところで、乃亜はあることを思い出す。
「そういえば朝食のオーダーの残りをタッパーに入れて持ってきたんです。どこかで一緒に食べますか?」
ダグラスは彼独特の低い声でまた笑った。
「あの騒動のあとでまだ食欲があるなら、君はコロラドの牧場でサバイブできるだけの素質があるよ」
「サバイブどころか、料理もしているし掃除もしているし、仔牛の命を救いましたからね」乃亜はちょっと得意げに胸を張った。「もう少し褒めてください」
運転席に腰を落ち着けたダグラスは、ハンドルを握ると乃亜をじっと見つめた。
そして神妙にうなずく。
「……もしこれまでの賛美が足りなかったなら、すまなかった。ありがとう。君は素晴らしいよ、ノア」
──だから! だからこのひとは!
どこかに『広瀬乃亜の扱い方』なるガイドブックでも隠し持っているのだろうか?
こんなに簡単に、一瞬で、乃亜を深い深いところに堕とす。乃亜は抗えない。抗おうとさえ思えない……。
「お役に立てて嬉しいです……」
推し活中の正しいファンの端くれとして、乃亜はダグラスに答えた。
もちろん、推し云々がただの苦しい言い訳であることを、乃亜はもう自覚している。乃亜はダグラスが好きだ。たとえ未来の不透明な恋でも、落ちずにはいられなかった。
ダグラスは薄く微笑んで、車にエンジンをかけた。
「とりあえず、どこかで食べようか。それから今日は買い出しが必要なんだ。君も来て一緒に選んでくれると助かる」