二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
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乃亜は短期だが留学したことがあるので、まったくのはじめてではない。
でも、久しぶりにやってきた北米の巨大スーパーマーケットのエントランスを前にして、料理人としての好奇心がムクムクと膨らんだ。
「牧場の経費で落とすから、いくらでも好きに選んでいいよ」
明らかに興奮している乃亜を見下ろしながら、ダグラスは優しくそう言った。おまけに彼の手にはアメリカン・エクスプレスのビジネスクレジットカードがあって、色は金で、それを乃亜に手渡してきた。
「食料品店で料理人にクレジットカ―ドを渡すなんて、あまり賢い選択じゃありませんよ」
乃亜はカードを受け取りながら忠告した。
「チャンピオン一頭にどれだけの値がつくと思う? なんとかなるよ」
「なっ! チャンピオンを売ったりしたら許しませんからねっ」
「じゃあ常識の範囲で買い物してくれ。ご覧の通り、普通の買い物くらいはいくらしても問題ないよ」
それはそうだろう……乃亜の手にあるのはアメックスのビジネスゴールドだ。
なんだか痴話喧嘩を通り越して夫婦喧嘩のような会話をしてしまった気がして、むず痒い。巨大なショッピングカートを押してくれるダグラスについて、乃亜は店内に入った。
選んでいくのは、コテージのケータリングと、皆の夕食のための食材。
広大な調理器具コーナーもあって、乃亜はそこで小一時間を溶かした。
乃亜の知らない商品についてダグラスが説明してくれたり、逆にアジア食材コーナーで、乃亜がダグラスに用途を教えたり……。
スーパーでの買い物だ。
いわゆるロマンチックな場所ではないはずなのに、乃亜はときめいた。例えば、ダグラスの好きなピーナッツバターのメーカーを知った──そんな些細なことが、親密で、なぜかエロチックなことのようにさえ思えてしまう。
やっぱり自分はチョロかったんだと、乃亜は諦めの境地に至った。
もう手遅れだ、と。