二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
そうしてやっと買い物の選別を終え、レジに向かおうとしているときだった。
「──ダグラス?」
ふたりの背後から、静かな女性の声がダグラスを呼び止めた。
ダグラスと乃亜は一緒に声のした方を肩越しに振り返る。そこには、おそらくダグラスと同年代の亜麻色の髪の女性がカートを持って立っていた。
ものすごい美人ではないかもしれない……でも落ち着いた雰囲気の、知的な魅力のある女性だった。
さっきまで乃亜の隣で笑顔だったダグラスが、急に表情を硬くする。
「ソフィア」
ダグラスがつぶやいた。
彼の口からは聞いたことがない種類の、まるで怯えたような声だった。ソフィアと呼ばれた女性は、最初にダグラスを、それから隣の乃亜をじっと見つめた。
「その子はあなたの恋人?」
ソフィアが問う。
責められていたとは思わない。
でも、明らかに祝福はされていない感じの、棘を含んだ問いかけ。乃亜は急に自分の足場が崩れていくような気がした。
だってこのふたりの間には、なにかがある。そのくらいは察せられた。
でも、乃亜の心をぽっきりふたつに折ったのは、次のダグラスのひと言だった。
「違う」
──それは真実だ。ダグラスは嘘をついたわけではない。
しかし、他の言い方だってあったはずだ。君には関係ないとか、どうだろうなとはぐらかすとか、いくらでも選択肢はある。でも百パーセント疑問の余地のない完全な否定。
「ダグラス、別に非難しているわけじゃないの。聞いて。昔、わたしが言ってしまったことは──」
「ソフィア、彼女は俺の恋人じゃない。俺は誰とも付き合うつもりはないし、ましてや結ばれるつもりはない。それでいいだろう」
「違うのよ。待って、ダグラス……」
乃亜が呆然とふたりの──『ふたり』の!──やり取りを眺めていると、なんとダグラスは彼と最も縁遠いと思っていたことをした。
逃げたのだ。
ソフィアを置いて。
もちろん、乃亜に至ってはショッピングカートいっぱいの食材まで一緒に置いてけぼりにして、異国のスーパーマーケットに置き去りにした。
乃亜は呆然と広くて冷たい床に立ち尽くした。