二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「あなたたちの邪魔をするつもりはないの。ダグラスにもそう伝えて」
 意外にも、ソフィアの口調に敵意は感じられなかった。
 ──いいえ。しっかりしなさい、乃亜! あなたはほんの数分前までダグラスに好かれていると勘違いしていたでしょう。感覚なんて信じちゃ駄目!

「あなたがダグラスになにか伝えたいなら、あなたが伝えてください。わたしがするべきことじゃありません」
「……そうかもしれないわね」
「ええ」

 ソフィアはまだ会話を続けたがっていたけれど、乃亜はもう限界だった。
 ずっとダグラスが押してくれていたショッピングカートの持ち手を握ると、なんとかソフィアの横を通り過ぎた。

 いっぱいになった米国サイズのショッピングカートはあまりにも重くて、おまけに真っ直ぐに進めるのが難しくて、なんの文句も言わずこれを押し続けてくれていたダグラスの優しさと強さを愛しく思うのと同時に……それらがすべて意味のない幻想だったことがわかって、心が押し潰される。

 乃亜はなんとか会計を済ませて外に出た。
 駐車場でダグラスが待っていてくれる予感は……正直、まったくしない。実際、彼のピックアップトラックが停まっていた場所にはすでに別の車が入っていた。

 乃亜のスマホがメッセージ着信を告げる。
 ネイトからだった。
『ダグラスから君を迎えに行けと頼まれた。すぐに行くから、エントランス横のベンチで待っていてくれ。あと十分』

 ありがたいことにアメリカのスーパーマーケットはショッピングカートを駐車場で使ってもまったく問題ないから、買い物の山を乗せたまま指示通りにベンチに座った。

 多分、乃亜の人生で一番長く感じた十分間だった。

 ネイトのピックアップトラックは車種こそ違ったがダグラスと同じ白で、よく似ていて、それが近づいてきたとき、乃亜は愚かにもダグラスの姿を期待してしまった。
 乃亜の目の前に車を停めると、ネイトは運転席から下りてこちらに向かってきた。このときやっと、乃亜は泣くことを自分に許した。
 大粒の涙をこぼしながら駆け寄ってくる乃亜を、ネイトは優しく抱きとめてくれた。
< 207 / 287 >

この作品をシェア

pagetop