二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「そんなふうに慰めないでください……。余計に辛いから」
「まあ聞いて。もちろん俺が知っているのは部外者視点の話だけだ。ダグラスは一切語りたがらないし、絶対に言い訳をしない男だから、本当のところは奴だけが知っている」

 ネイトは車を走らせはじめた。
 乃亜はまだシートベルトをしていなかったので、慌てて締める。可笑しな感覚だった……だってダグラスだったら、絶対に車を走らせる前に乃亜のシートベルトを確認する。

 笑ってしまうくらい小さいことだけど、乃亜はそんな些細なことにもダグラスの愛情を感じてしまった。こんなときに。

「ノア……ダグラスが四年間米軍に従軍していた話は知っているだろう?」
「はい、聞きました。ちょうど反抗期だった、みたいな話も……」
「そうだな。まあ年齢的に、多かれ少なかれ誰でも親に反抗している時期じゃないか。ただダグラスとウィリアムはそれまでが本当に仲が良かったから、お互い余計に気になったんだろう。とにかく──」

 ネイトはハンドルを握っているので、時々右折や左折に集中するために話を区切る。
 乃亜は辛抱強く続きを待った。

「ダグラスが入隊(エンリスト)するとき、ジョッシュというダグラスの親友が一緒に行くと言い出した」
「ジョッシュ……」
「そう。ソフィアはそのジョッシュの恋人だったんだよ。たしか中学生くらいの頃からずっと思想相愛で、本当に仲が良かった。ただジョッシュの家は貧しいイタリア系で、ソフィアの家は……まぁ、いわゆる典型的なワスプのエスタブリッシュメントだ。だから身分違いだったんだ」

 乃亜は小さく笑ってしまった。
「二十一世紀ですよ。身分なんてあるんですか?」
「ここはコロラド州のワイルド・ウエストだよ。あるに決まってるだろう。君が思う以上にね」
「そうかもしれませんね……」

 別にコロラドに限らないのかもしれない。人種。身分。人間の性だ。
 日本でだって、乃亜はもう血が薄いのと、世代的にすでにそう珍しくないので滅多に言われないが、クォーターである母は若い頃に結構苦労した。
< 210 / 287 >

この作品をシェア

pagetop