二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「君のすべてが欲しいから」 ※一部ダグラス視点
細い雨が厩舎の屋根を打つ音が聞こえる。
雨そのものを好きだと思ったことはあまりないが、ダグラスはその雨が大地にもたらす匂いが好きだった。
乃亜にも少し同じ香りがする。華やかではない、派手でもない、ただ心を落ち着かせるばかりの優しい芳香……。
ダグラスはそれを吸いながら眠る権利を欲しくてたまらない。
「だからどうした、ダグラス・ジョンソン・マクブライト……。お前がなにを欲したからって、それが得られるわけじゃない」
ダグラスは宙に向けて独り言をつぶやいた。
もしくは、同じ空間を共有している、三十八頭の馬に向けて。
手にはすでに半分飲み干したウィスキーの瓶があって、ダグラスはもう一度その琥珀色の液体を喉に押し流した。
ダグラスは普段、数杯のビールしか嗜まないようにしている。酒が嫌いなわけでも、弱いわけでもないのだが、自分の中に流れる血をダグラスは信用していなかった。いくらウィリアムという法王も真っ青な清廉潔白な男に育てられたといっても、ダグラスの血の繋がった父は酒狂いで、マフィアの抗争に巻き込まれて犬死した阿呆だ。
(いや……あのひとも……昔はもう少しまともだったんだろう、おそらく……)
ダグラスの母が亡くなるまでは。
幼すぎて覚えていないが、少なくとも周りの人間から聞いた話によれば、ダグラスの父親が道を踏み外したのは妻の死を乗り越えられなかったことが原因だった。
──素晴らしい。
自分を育てた男だけでなく、血の繋がった父親までが、たったひとりの女性に心を捧げ、そして人生を狂わせていったのだ。
自分もその道をまっしぐらに突進している自覚はあったので、ダグラスはその孤独を紛らわすため、もうひと口ウィスキーをあおった。