二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ダグラスは目の前の乃亜をじっと見つめた。
仔牛を蘇生させたあとに笑っていた童女のような無邪気さは薄れて、覚悟を決めた大人の女性がそこにはいた。
まさか……。
「本物……なのか……?」
「なんだと思っていたんですか? 幽霊?」
「俺の欲望が見せた幻かと……」
ダグラスは少しずつ尻を引きずってあとずさった。乃亜はそのままの姿勢で、包むものがなくなった手を所在なく宙に浮かせた。
「本物です。家にはいなかったから、多分ここだろうってネイトさんが」
「ネイト」
する権利のない嫉妬を、ダグラスはした。
逃げ出したダグラスに代わって乃亜を安全に牧場まで帰したのはネイトだ。英雄はネイトで、ダグラスはただの道化。感謝こそすれ、妬く資格などダグラスにはないのに、正論や理性はもう遠いどこかに行ってしまっている。
ダグラスはウィスキーの瓶を持ったままふらふらと立ち上がった。
「俺から離れるんだ、ノア」
「ダグラス」
「そんなふうに俺の名前を呼ばないでくれ。俺は君を置き去りにするような男なんだ。近寄っちゃ駄目だ」
「でも、ちゃんとネイトさんを呼んでくれたでしょう? わたしはもう赤ちゃんじゃないんですよ……もちろん傷ついたけど」
乃亜も一緒に立ち上がる。そしてダグラスに対峙するように向き合った。
ダグラスは乃亜のまなざしの純真さに耐えられなくなって、逃げ場を探した。とはいえ、ウィスキー瓶を半分以上空けたあとのダグラスの足はふらつく。
フラフラと横に移動するダグラスの醜態を、乃亜の視線が追った。
こんなときにその資格はないとわかっていたが、ダグラスのプライドは明確に傷ついた──乃亜の瞳には明らかな憐憫が宿っていたからだ。
──乃亜は正しい。お前は哀れな男なんだよ、ダグラス。
そう思うとダグラスの中にあまりにも多くの感情が渦巻いた。愛しさだけじゃない。悲しみだけじゃない。怒り。焦り。絶望。希望。
まさに酔っ払いだけができるおぼつかない足取りで、ダグラスはすべてを捨てたくて外に向かった。