二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「俺は朝の五時に起きて日が暮れるまで必死に働き続けた。毎日。毎日。足を折った日でさえ休まなかった。時々、俺はなにをしているんだろうと、泣きたくさえなった──それでも」

 ダグラスは息苦しくなって思わず胸をかきむしった。
 乃亜は雨の中に足を踏み出してくる。

「それでも……俺はもう一度同じことをするよ。何度でも。何度でもだ……必要なら、俺は何度でも同じことをする。君が存在するために必要なことなら、何度でも繰り返す」

 ウィリアムの選択に苛立ったこともあった。
 彼のことを捨てた(ハルコ)
 会うこともできない(ツキコ)
 それを救うために、文字通り血の滲むような努力をしなければならなかったのは結局、他の誰でもない、自分自身だ。
 ウィリアムと春子の叶わなかった愛の陰で犠牲を払う羽目になったのは、よりによってダグラスだった……それでも。

 その無意味に思えた日々に意味を持たせてくれたのが乃亜だ。
 もし月子が乃亜の母を産むまで生き永らえられなかったなら、乃亜は存在しないのだから。

「君が存在するために必要な努力だったなら……俺は喜んでそれを受け入れる」
「ダグラス……」
「さあ、俺の阿呆な告白は聞いただろう。さっさと荷物をまとめて日本へ帰ってくれ」──帰らないでくれ──「もしくは家へ戻って、ネイトと仲良くしていてくれ」──冗談じゃない、あの男の喉を掻き切ってやる──「そうでなければ……」
「ダグラス、もういいの。静かにして」

 ふぅん?
 ダグラスは酔った頭で余計なことを考えた。乃亜は静かな男が好きなのか? だったら自分にもそれなりに望みがあるのかもしれない……。

 雨が降っていた。
 横に吹きつける風がふたりを濡らす。それでも。
 乃亜はダグラスの前まで来て、彼の唇に人差し指を当てて黙らせた。ダグラスの腕は勝手に彼女の腰を抱いていた。

 雨が、降り続けていた。
 
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