二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ダグラスの手が乃亜の腹部をゆっくりと撫でた。男と女が愛し合うことの本当の意味。
もう半世紀以上も前、春子とウィリアムもこうして肌を重ねた。
誰もいない川辺で。
互いの身体と心だけを拠りどころに。
「これが夢なら……覚めないで欲しい。君が幻なら……このまま永遠に見ていたい」
ぎゅっとダグラスの腕に力が入る。
「夢が覚めるのを恐れないで。わたしはここにいるから」
こんな瞬間を迎えることを……きっと多くのひとが夢に見る。
誰かと出会って恋に落ちて、愛を知って、身体と心を繋げる。肌に触れて声を聞いて、その誰かを幸せにしたいと願う瞬間。
乃亜は少なくともそんな瞬間を迎えた。
たとえこれが永遠でなくても、ひと時だけの邂逅にすぎなくても、後悔するとわかっていても……手放すことはできない。
乃亜は肩越しに後ろを向いて、ダグラスの唇に自分の唇を近づけた。
ウィスキーと、雨と涙の混じった匂いが鼻腔をつく。一日が終わろうとしている頃だから、いつもは綺麗に剃られているダグラスの頬は少しザラザラとしていた。
「怖くは……ないのか?」
ダグラスの問いに、乃亜は首を横に振った。
不思議なデジャヴを感じる。そうだ……ウィリアムもはじめて春子と結ばれる前に、同じ質問をした。
「ううん。ダグラスは……?」
「俺は怖いよ」
「どうして──」
「これから俺は永遠に君を愛するようになる。でも君は、一時の気の迷いで酔っ払ったカウボーイに身体を許したことを後悔して、俺を遠ざけるようになるかもしれないから」
本当に。
このひとは。
どこまで乃亜を沼に落としたら気がすむのだろう?
「もしかしたらわたしも、その酔っ払ったカウボーイを永遠に愛するようになるかもしれないのに」
「そう願うよ」
「そうなったら……」
「うん?」
「大事にしてくれる?」
ダグラスが呼吸を止めるのがわかった。空気が変わる。優しく触れていた彼の手に痛いくらいの力が入った。
お互いに顔を寄せ合って、静かな口づけをした。
舌は使わない、唇だけをついばみ合うような厳かな接吻。外は雷雨が吹き荒れていて、ふたりがいるのはコロラドの果ての厩舎で、そこに未来の保証はない。それでも……。
「当たり前だろう……。この息が止まる日まで、俺は君を幸せにすることしか考えない」