二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
四十五分後、ダグラスは乃亜をピックアップトラックに乗せてスプリング・ヘイブン牧場を出た。助手席に座る乃亜の手には、はじめて会った日に見た白い封筒が握られている。
ダグラスの心は重く沈んだ。
いつもなら乃亜は、隣でハンドルを握るダグラスを明るく輝く瞳で見つめて、コロラドや牧場についてのとりとめのない質問を繰り返す。
その声はいつだってダグラスの耳を楽しませた。
その瞳はときにダグラスの情熱に火をつけた。
──昨晩、酔ったダグラスがネイトの車には乗るなと乃亜にのたまったというのは、記憶にはないが現実味があった。
なぜなら普通に我慢ならないからだ。
でも今の乃亜は……いつもはピンと伸ばした姿勢を屈めて、虚ろな目で膝の上にある白い封筒を見つめている。
「ノア……大丈夫か?」
できるだけ優しい口調になるよう心掛けて、ダグラスは問いかけた。
乃亜はゆっくり顔を上げて、ダグラスに目を向ける。
「はい。多分……少し緊張してるだけだと……」
そう言いながらもその瞳は悲し気で、心細そうで、ダグラスはできるならハンドルから手を離して彼女の頬を包み込みたかった。
そして、すべての不安を吹き飛ばしてやれるようなキスをしたかった。
しかし安全面を考慮しても、道徳面を鑑みても、ダグラスは今それをするべきではない。
「親父は君と会えるのを喜ぶよ」
「そうだといいなと思います。でも、わたしが気にしてるのは、そんなことじゃなくて……」
そのときちょうど右折があり、ダグラスは正面を見る必要があった。
乃亜から目を離した一瞬の隙に──だからこの女性から目を離すのは嫌なんだ──大きな涙がひと粒、彼女の頬を伝い落ちた。
ダグラスの心は千の欠片に砕けた。