二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 愛する女性の涙を見ることがこれほど苦しいとは……誰が想像しただろう。ダグラスは我慢できなくなって、その場でハンドルを切るとピックアップトラックを道脇に停めた。

「ノア……」
「わ、わたし……この手紙を渡したら帰るって約束したのに……帰りたく、ないの」

 もうひと粒、さらに大きい涙が乃亜の頬を伝う。
 ダグラスの中の道徳はもう消えてなくなっていた。この女性を泣かせる道徳などいらない。ダグラスは両手で乃亜の頬を包むと、顔を近づけた。

「帰さない」
「でも──」
「帰さない。聞こえたか? わかったか? 俺は、君を、帰さない」

 それでも流れた涙が、白い封筒に落ちて透明な染みが広がった。春子がウィリアムに伝えたい言葉が、こうして乃亜の手の中にある。そんな乃亜をウィリアムの元まで届けるのはダグラスだ。

 運命の輪はときに残忍に回り、それでも優しい川のように流れ続ける。

 春子とウィリアムが選んだ道。
 ダグラスと乃亜がこれから進むべき未来。

 今日、それらはおそらく交叉する。
 それぞれの心が、あるべき場所に還るために。

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