二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「くそ……さっさと教えてくれていたら、俺は最初の日にあんたの大事なひ孫を金目当ての女扱いして、暴言を吐くような真似はしなかったのに」
「ふん……?」
「おかげでノアは今でも俺の気持ちに半信半疑でいるよ。どうしてくれるんだ」
深い皺がいくつも刻まれた目元を細めて、ウィリアムはしゃがれた声で短く笑った。
「自分でなんとかするんだ、息子よ。さあ、わたしのひ孫に会わせてくれ」
ウィリアムに告げられて、ダグラスは一歩下がって背後にいる乃亜の隣に立った。
自分にそうする資格があるとは思えなかった──が、ダグラスは乃亜の肩を抱き寄せた。彼女は明らかにそういった種類の助けを必要としていて、震えながら立ちすくんでいたからだ。
乃亜は不安げにダグラスを見上げた。
そんな乃亜を見下ろして、ダグラスは無言でうなずいた。
おそらく締まりのない顔をしていたのだろう。ウィリアムが喉の奥で小さく笑うのが聞こえる。
今まで散々『ハルコ』への献身と愛をからかっていたダグラスへの、ささやかな復讐なのだ、これは。
それでかまわなかった。
それでよかった。
『乃亜』
ウィリアムが呼ぶ乃亜の名前は、ダグラスのそれとは少しアクセントが違った。
それが日本語の発音に合わせたものだと気づいたのは、次にウィリアムが話しはじめたのが流暢な日本語だったからだ。
『来てくれてありがとう。どうか顔を見せてくれ』
それを聞くと乃亜は息を詰めて、ウィリアムに一歩近づいた。
『わたしが来るのを、知っていたんですか?』
『ああ。どうもはりきりすぎてしまったようだ。まさか心臓発作など……。まだまだ若いつもりでいたのに……申し訳ない。ダグラスが粗相をしていないといいのだが』
乃亜は涙声でクスっと笑った。
『とても紳士でしたよ』
『それはそうだろう。そういうふうに育てたんだ』
『その話は聞きました……。素敵なひとを育ててくれて、ありがとうございます』
『どうして礼を?』
彼らのやりとりを、ダグラスは理解できない。それでもおそらく自分のことを語られているのは察せられた。
ウィリアムはどこか誇らしそうな微笑を浮かべていて。
乃亜は……恥ずかしそうに頬を赤らめていた。