二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
『彼のことが好きから……。短い間だったけど、今までの人生の中で一番の思い出を与えてくれました』
『乃亜、わたしの娘……』ウィリアムは静かに言った。『思い出にしてしまう必要はないんだよ。君たちには未来がある』
ウィリアムが点滴に繋がった腕を伸ばすと、乃亜はそこに吸い込まれるように向かっていった。乃亜の若くて白い手が、九十九歳の老人の皺と染みだらけの手に重なる。
彼らは熱く抱き合ったりはしなかった。
静かに手を重ねて、互いの顔をじっと見つめている。
言葉は必要ないらしかった。
しばらくして、乃亜がぽつりとつぶやく。
『そうだったらいいと……思います。でも、彼は色々難しいものを背負っているし……わたしは外国人だから、理由なくいつまでもコロラドにはいられなくて』
『それについては──』
ウィリアムはそこまで言って、ダグラスに視線を向けた。
すべてを見通す透き通った青がダグラスを見すえる。なにを喋っていたのかわからなくても、伝わるものはあった。
ダグラスの心も決まっていた──もうすでに、きっと出会いの瞬間から。
「ダグラス、彼女としばらくふたりきりで話をしたい。お前には他にやることがあるだろう。さっさと済ませてくるんだ。それまで戻ってくることは許さない」
会話を英語に戻して、ウィリアムは告げた。
ダグラスはうなずいた。
手を重ねたままの曽祖父とひ孫を病室に残して、ダグラスはその場をあとにした。