二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
制限速度すれすれにピックアップトラックを飛ばしたにも関わらず、ダグラスが病院に戻ったとき、なんと乃亜はすでにタクシーを呼んで牧場に戻ってしまったあとだという。
「どういうことだ? ノアになにか言ったのか、親父?」
「まあ、落ち着くんだ。寄る年波には勝てなくてな……少し休ませてくれと言ったら、だったら一旦牧場に戻ると……」
ベッドの上でそう説明するウィリアムには、確かに疲れの色が見えた。
長年静かに待ち続けたのであろう『ハルコ』との子供にやっと会えたのだ。経過良好とはいえ心臓発作を起こした身で、疲労が出るのは当然だろう。
「ダグラス」
義父の声には警告の響きがあった。
七歳ではじめてこの男性と出会ったときから三十五歳の今日まで、この口調の彼には逆らえない。ウィリアム・マクブライトは仏のように物静かで柔和な人物と思われがちだが、その本質は鋼のような強い意志を秘めた侍だった。
まあ、そうでなければ、八十年近く会うこともできなかった女性を愛し続けたりはできないだろう。
「わたしに代わって、あの子を迎えてくれたことは感謝している。もしかしたら……そうなるべき運命だったのかもしれないが……」
「親父」
「可愛い子だ。そうだろう? 春子にそっくりだった……信じられないくらいに」
よく見ると、ウィリアムの手には例の白い封筒が握られていた。
封はすでに切られている。
ダグラスにとってこの手紙は、そこになにが記されていたにせよ、乃亜という存在をスプリング・ヘイブン牧場に運んでくれた天からの白い救いの羽根だった。
ウィリアムにとっては、なんだったのだろう。
「本人の自己申告によるところは……そう聞いているよ。そんなに似ていたのか?」
「ああ。乃亜の方が少し……そうだな、今どきの子なのだろうな……ほっそりしていて背が高い。春子は本当に小さかった。小さくて……わたしが守ってやるはずだったのに」
ウィリアムは手元の封筒に視線を落とした。