二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
直美が乃亜の母の名前であることはすでに知っていた。若いうちに幸せな結婚をしていて、好きな仕事に打ち込んでいて、幼少の乃亜を育てたのは主に春子の方だったという話も。
ダグラスは涙が溢れてくるのを止められなかった。
「いつから……連絡を取り合っていたんだ?」
「春頃だ。誓って言うが、それまで連絡は一切なかったよ」
「でも、どうして……」
「乃亜が失恋に傷ついていると……。なんでも相手は上司で、乃亜を捨てただけでなく、仕事も奪ったとか……。信じられない阿呆だ。もしあと二十年若かったら……わたしが素手で首を絞めてやるところだ」
「ああ、その阿呆にはいつか、俺がこの手で死ぬより辛い目に合わせてやる。安心してくれ」
「それでこそ我が息子だ。とにかく……乃亜には休息が必要だと。そのためにコロラドの牧場がいいだろうと……。わたしは返事を書いた。お前のことも教えた。年も近いだろう」
ダグラスは失笑した。「俺たちは十一年離れているよ」
「お前はこれが、九十九歳と九十七歳のやり取りだというのを忘れたのか? 十一年など一瞬だ。瞬きをしている間に過ぎていく。覚えておくといい」
「わかったよ……」
ダグラスは数度うなずいた。
ウィリアムは安堵したようにゆっくり瞳を閉じ、ダグラスが手紙を返すと、それを静かに握った。その手は皺だらけで肉はそぎ落ちている。
それでも。
「だったら、これからなにをするべきかも……わかっているだろう」
「ああ」
「そしてこれは……乃亜のためだけじゃない……。ダグラス……お前にも救いが必要だった。休息が。自由が。お前たちふたりで……この先を決めなさい。それがどんなものでも……わたしは祝福するよ」
再びうなずくと、眠りに落ちたウィリアムの額に親愛の口づけを残して、ダグラスは病室をあとにした。