二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 ダグラスは自分の脚が無駄に長いことに感謝した。部屋の入口から乃亜の前に辿り着くのに要した時間は、おそらく一秒以下だったはずだ。それでも十分とは言えなかった。

「帰さないと言ったはずだ」
 ──だからどうした。
 お前の望みが乃亜のそれと重なるなどと、どうして思い込んだのだろう。

 乃亜は日本に帰りたがっている。
 ダグラスを置いて。
 コロラドの大地も、ふたりで誕生させた仔牛も、入院中の曽祖父もすべてなかったことにして……。

「でも、わたしはただ……」

 続きを聞きたくなくて、ダグラスはその場に……乃亜の足元にひざまずいてそのまま突っ伏した。
 ベッドの上には開いた乃亜のスーツケースがあって、パゴサで買い込んだ牧場用の衣類までが畳まれて収められている。
 少なくとも焼いて捨てられなかったことを喜ぶべきだろうか? くそ、くそ、くそ……。ダグラスは両手で顔を覆って肩を震わせた。

「ダ……ダグラス? 泣いているの?」
 また?
 ……という呆れた声が聞こえてきそうな気がした。酔っ払って厩舎で泣き、日本に帰ると言われて床にくずおれて泣く。いったい自分はいつからこんな男になったのだろう?

 母を亡くした過去。父に置き去りにされた現実。戦いの中で失った親友。唯一の家族はおそらくそう長くはないであろう義父だけで、それでもダグラスは泣いたりしなかった。
 心に鎧をまとって、過去も未来も封印して。

 それが、この天使の前で、ダグラスの心は丸裸になる。
 未来を求めてしまう……ふたりの永遠を。

「わたしが帰るから、泣いてくれているの?」
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