二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 乃亜の手がダグラスの髪に触れる。そっと髪を梳くように撫でられて、ダグラスの股間はそれだけで達しそうになった。
 この娘はふざけているのか? これは新手の拷問なのか? どうしてそんな質問が出るんだ、東京のお嬢さん──。

「俺の涙で……君を引き留められるなら……いつまででも泣くよ」
「そんな……大事な涙を無駄にしないでください」
「いいや、俺の涙に価値なんてない。どうせ君は俺を置いていくんだろう。いいか、それでも俺がウィリアムのように大人しくこの牧場で待っていると思うなよ。どこまででも追いかけていく。地獄でも天国でも、コロラドでも東京でも関係ない」

 乃亜がくすりと笑うのが聞こえた。
 笑う!
 ダグラスが顔を上げると目の前にいたのは、ダグラスと同じように瞳に涙を浮かべた乃亜だった。

「わたしはちゃんと帰ってきます。ここに。春の安息の地に」
「いつ? 俺は三秒以上待てない」
「それはちょっと……短いですね」
「短いよ、それが限界だ」ダグラスは断言した。「そういう男に……君がしたんだ」

 ダグラスはひざまずいた格好のまま、目の前で同じように膝を床についた乃亜を世界から隠すように抱きしめた。必要ならこのまま彼女を離さないでいるつもりだった。
 乃亜の手がおずおずとダグラスの背に回される。
 ダグラスは彼女の首に顔をうずめて(すが)った。

「ノア……行くな」
「違うの、聞いて……。わたしは日本に帰って……春子おばあちゃんをここに連れてこようと思うんです。年齢的に難しいけど……医者からの診断書と、高めの旅行保険料を払えば、なんとか乗せてくれる航空会社もあるみたいで」

 ダグラスはあんぐりと口を開けたまま固まって、しばらくなにも言えなくなった。
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