二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「そんなに心配しなくていい。ちゃんと大人しくしているよ」
と言って、ダグラスはポンと乃亜の頭に手を乗せる。
乃亜はなんとかうなずいた。
「それはわかっています。こっちこそ、あなたを驚かせてしまうんじゃないかと思って。お母さんは英語が苦手というか……嫌いなんです。お父さんは普通ですけど。もちろん春子おばあちゃんは流暢ですよ。それに部屋も狭いし」
「俺は君の実家には泊まらない。もうホテルを取ってある」
「え! ど……どうして……?」
「ノア」
ダグラスは何度かキーボードを打ったあとにいくつか開いていた会計アプリのようなものを保存し、ノートパソコンを閉じた。
「……俺はけじめをつけたい。酔って君のはじめてを奪っただけじゃなく、君の両親の家で盛りついたりするわけにはいかないんだ。本音を言えば一歩でも君から離れたくないよ。ただ……同じ屋根の下でどこまで我慢できるか自信がない。そして君のご両親に失礼はしたくないんだ」
乃亜はぱちぱちと目をまたたいた。
この男性が浮ついたひとだと思ったことはなかったが……これは。
機内はほぼ満席だし、会話は英語なので周囲にダグラスの言葉は多分漏れ聞こえている。後ろの座席の中年男性が居心地悪そうにゴホンと咳払いするのが聞こえた。
「そこまで……気を使わなくていいんですよ……?」
「ノア、俺は気を使っているわけじゃない」ダグラスは厳かな口調でささやいた。「いつか義理の両親になって欲しい人たちにいい印象を持って欲しいだけだ。俺は煩悩の塊だよ。外堀を埋めているんだ」
──え?
え。
ええ……?
「ま……待って。どういう……」
「言葉通りの意味だ。ただ、ノア……どうしても必要ならそうするが、できれば満席のエコノミー便の座席でプロポーズはしたくない。この話はあとにしよう」