二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ええ!
嘘でしょう? うそ、でしょう……?
「ダグラス……。そうやって責任を取るつもりなら……いいの。あなたが酔っているときに迫ったのはわたしだから……」
むしろ乃亜が、なんらかの責任を取らなくちゃいけないような気さえしてきた。
もしかしたらカウボーイというのは今でも十九世紀辺りのモラルで生きているのだろうか? ネイトはそんな感じはしなかったけれど……この乃亜のカウボーイは、違う。
ダグラスはあれから乃亜を抱いていない。
それこそひとつ屋根の下にいたのに。
乃亜はそれを、単にダグラスがもう興味を失ってしまったからではないかと訝しがりはじめていた。でも……。
「責任を取らなきゃいけないのは俺じゃない。君だ」
ダグラスがそうつぶやいた瞬間、座席間の通路を通るアメリカ人男性がひとり、乃亜に物欲しそうな目線を送ってきた。
飛行機内というのは他人ばかりがひしめき合っているせいか、こういった無言の視線のやり取りのようなものが、とても濃く密になる。
通路側のダグラスは、長い脚をすっと伸ばして己のテリトリーを誇示するような姿勢を取り、現れた敵を威嚇する目でその男性に鋭い視線を返した。
男性は肩をすぼめてスゴスゴとふたりの横を通り過ぎた。
「ダグラス……」
ああ……これが続くかもしれないんだ?
日本で?
ダグラスはそれこそマーキングをするように乃亜の太ももを撫でたあと、彼女の手を取ってその……薬指の付け根あたりに唇を寄せた。
「……ハルコは君と同じ家で暮らしているんだろう? ご両親も一緒に?」
頭がぼうっとしていた乃亜は、その返事を脳内でまとめるまでに数秒を要した。
「はい……。いわゆる二世帯住宅というか……一応扉玄関も別にあるんですけど、いつも一緒です。数年前に春子おばあちゃんが腰を悪くして以来、元々近所だったのを一緒に住むようになって……」
「だったら、とりあえずまっすぐ君の実家に行こう」
「は、はい」
「それからひとつ、君に教えてもらいたい日本語がある」
「それはもちろん、喜んで」
「じゃあ……」
──と言って、ダグラスが次に紡いだ言葉に、乃亜は息を詰まらせた。そして、彼の胸に顔を預けて、しばらく泣いた。
成田までの十時間以上の間、ダグラスと乃亜はそれを何度も練習した。