二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「俺はそのためにこの生涯を捧げます」 ※乃亜視点
ダグラスがしばらく春子と話をさせて欲しいと言ったとき、乃亜は席を外すべきなのだろうと思って、キッチンに向かおうとした。
「じゃあ……わたしはお茶の準備をしてきますね。コーヒーの方がいい?」
「ノア、君にはここにいて欲しい」
しかし、ダグラスはそう言って乃亜を引き留めた。
広瀬家のリビングはおそらく都内の基準でいえばそれなりに広い。乃亜の母は大きな病院勤務の医者で、それなりの収入があった。バレエのような費用のかかる習い事を続けられたのもそのお陰だ。ただ多忙であるため、小さい頃の乃亜を世話してくれたのは主に春子だった。
父は普通の会社員である。
それでもダグラスがいると、この空間がひどく小さく見えた。
春子は窓辺の安楽椅子に座っていて、ダグラスの存在に涙を流していた。
「そうよ、乃亜……あなたもここにいて」
春子は英語でそう言った。
このひとはウィリアムと別れたあとも勉強を続けたので、一度も外国に住んだことのないこの年代の女性としては、驚くほど流暢な英語を操れる。
乃亜はうなずくとダグラスの隣に佇んだ。
ダグラスはゆっくりと春子の前に膝を折ってひざまずいた。
「俺の日本語はここまでで申し訳ない。もう少し時間があればもっと学んだところですが……今はこうして喋らせて欲しい」
「いいのよ、坊や」
春子は静かに答えた。「あなたがウィリアムの息子ね」
「はい」
「彼は……幸せだったかしら? わたしを恨んでいない?」
春子の手がなにかを探すように宙をさまよったので、ダグラスは迷わずにその手を取った。
「親父があなたを恨んだことは一度もないはずです」