二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 とりあえず一番心配していた母が、存外にダグラスを気に入ってくれたようなのは救いだった。直美と乃亜は母娘だが、大人になってからはどこか姉妹のような関係だったお陰でもあるだろう。実際、同じ女性に育てられたのだから、ある意味自然なことだった。

 結局、乃亜は(いとま)するというダグラスを玄関まで見送った。
 ダグラスが泊まるのは、世界的にも名高い高級チェーンホテルだった。あまりそういう贅沢にお金を使うタイプではない気がしていたので、ちょっと意外ではある。

「おやすみ。またフライパンで頭を怪我しないようにしてくれ」
 そう言って、ダグラスは乃亜のおでこの上のほう、かつてフライパンでぶつけて痣ができていた場所にさよならのキスをした。

「しませんよ、ふふ」
「落雷にも気をつけてくれ。あのときは心臓が止まるかと思ったから」
「はーい」
「また明日」

 クスクスと笑いながら、玄関先でダグラスにひと時の別れを告げる。でも、彼の姿が見えなくなったあと、乃亜はあまりの寂しさにその場から動けなくなった。

 こんな……。
 こんな日がくるなんて想像さえしなかった。こんな想いがあるなんて、今でも信じられない。こんなに誰かを好きになるなんて……。

「乃亜、行ってもいいのよ」
 たっぷり十分後、乃亜が玄関先でいつまでもぽつねんと動けずにいると、胸の前で腕を組んだ直美がそう告げた。
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