二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「くそ……ノア」
 君の家には泊まれない──などと宣言してきたはいいものの、現在のダグラスにできそうなことは限られていた。

 一、さっさと前言撤回して、乃亜の元に戻ること。たとえひと晩でも彼女と離れているのは無理そうだった。やってみてわかった。無理なものは無理だ。
 二、例のシェフを探し出し、襲撃をする……いや、そこまで物騒にする必要はない。非常に平和的な語り合いをすることで、奴が失ったものの大きさを思い知らせてやれればそれでいい。ついでに手が滑って、二、三発の拳が飛ぶかもしれないが、それらはあくまで事故である。
 三、…………。

 トントン。
 客室の扉が叩かれる音がした。
 同時に、ダグラスのスマホにメッセージの着信を知らせる音が響く。乃亜からだった。

『扉の前にいます。もし裸じゃなかったら出てきてください』

 ああ……。
 ここまで胸が熱くなったのははじめてだった。今ならこの熱だけで冬のコロラドを温められる。ダグラスは返事を打った。

『もし裸だったら?』

 じゃあ、服を着てください、という返信があるのを予想してダグラスは待った。
 しばらくの間があって、広瀬乃亜は、おそらくダグラス・ジョンソン・マクブライトが一生忘れられないであろう、衝撃的な一文を送り付けてきた。

『じゃあ、わたしも今、この場で脱ぎます』

 なんだって(ホワット)!?
 ダグラスは記録的な速さで客室を突進して扉を開いた。そこには乃亜がいた。

 もちろん服はまだ着ていて、妖婦のようにダグラスを惑わせたあとだというのに、天使のような笑みを浮かべて佇んでいた。
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