二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
【ウィリアムの章】

Jealous of the Angels


 ウィリアムの人生には三つの機転があった。
 ひとつは春子と出会った瞬間。
 もうひとつは春子と別れたとき。

 そして最後のひとつは、ダグラス・ジョンソンという名の孤独な少年がスプリング・ヘイブン牧場に辿り着いた日だった。

 * *

「これを運ぶのを手伝えばいいんですか」
 質問というより、確認といった感じで七歳の少年がウィリアムに言った。

 少年の手には、大人の男でも手に余るような、重い飼料の麻袋が握られている。
 凛とした顔つきは大人びていて、背も高かったため、もし七歳という年齢を事前に知らされていなかったら、十は超えていると勘違いしただろう。

「ダグラス……これは君のお父さんの仕事であって、君の仕事じゃないんだよ。君はキャビンで宿題でもしていなさい。もしくはバックヤードで遊んでいてもいい。探せばボールくらいはあるだろうから、ちょっと待っていてくれ──」

「そういうわけにはいかないんです」
 ダグラス少年は詰まる喉から無理に押し出すような、震えた声で遮った。

「……父さんはお酒を飲んでキャビンで寝ています。起こそうとしたけど、起きませんでした。だから僕が代わりに働きます」
「ダグラス……」
「だから僕たちを追い出さないでください」

 ジョンソン親子がスプリング・ヘイブン牧場に来てから、三日目の出来事だった。
 ウィリアムはその人生の中で、『心が破れる(ハートブローケン)』と言われる状況を何度も経験してきていた。

 春子との別れ。
 ほぼ無実の五年間の投獄。その間の両親の死。
 ただひとりの我が子とは二度しか顔を合わせることができず、二十年以上前に亡くした。

 それ以降のウィリアムの人生は生ける屍も同然だった。
 唯一、この生にしがみつく希望は、春子がまだこの地上にいることと、彼らの孫がどこかで息をしていること……それだけだった。
 しかし。これは。
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