二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「……わかったよ、ダグラス。君には厩舎の掃除をしてもらおうか。ちょうどひとを探していたんだ」
ダグラス少年は目に見えて安堵していた。
「はい。喜んで」
自分の体重よりも重い麻袋をどうやって持ち運ぶのか、不安だったのだろう。「喜んで」厩舎の掃除をする七歳がいていいものか。ウィリアムの心は沈んだが、このダグラスという少年には感心した。
ダグラスは厩舎の掃除を完璧にこなした。
ちょっと、七歳の少年としては不安になってしまうくらいに、塵ひとつ残さず、文句ひとつ言わずに与えられた仕事をやり遂げた。
一方、ダグラスの父親はといえば、酒さえ入らなければ真っ当に仕事をこなした。そしてなによりも馬の飼育に関しては天性の才能があったので、この分野をできるだけ伸ばしたいと考えるウィリアムは彼を重宝した。
スプリング・ヘイブン牧場は決して赤字ではなかったが、もっと大きく儲けるためにはどうしても土地が足りない──月子のために、湖畔周辺の最も肥沃で広大な土地を手放したからだ。
土地というのは売るのは一瞬だが、買い戻すのは本当に難しい。限られた土地でできるだけ利益を上げられるのが競走馬の飼育だったのだ。
そのためにジョンソン親子が必要だった。
ダグラスにも父親同様の才能があるのに気づいたのは、彼が九歳になる少し前だった。
「どう、どう。大人しくしていろ。あとで乗ってやるから」
当初は厩舎の掃除だけだったものが、気がつくとダグラスは完璧に大人の馬をひとりで乗りこなして世話していた。
何頭かの馬は、ダグラスが学校で二泊のフィールド・トリップに行き牧場を留守にしたとき、餌を拒否して他の飼育係を困らせたほどだった。
この頃になると、ダグラスは例の飼料の麻袋さえ難なく背負えるような体躯にもなっていた。
しかし──中身はまだ子供だ。
子供でなくてはならないんだ。
ウィリアムはこの少年を守りたかったが、血の繋がった実の父親が隣にいる限り、ただの雇い主であるウィリアムの権限は限られている。
それでもできる限りのことをした。
学校の送り迎え。勉強の手伝い。夕食を出してやること。
どうしてだろう……。
おそらくウィリアムは、少年のダグラスに自分自身の影を見たのだ。
不遇の風に吹かれても弱音ひとつ漏らさず、黙々と目の前に与えられた運命に挑戦していくその姿に、年甲斐もなく憧れたのかもしれない。自分もそうでありたいと。
しかし、その強さも虚栄であり、ダグラスが彼自身の周りに張り巡らせていた壁でしかなかったことがわかったのは、九歳のときだった。