二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 しばらく行方不明になっていたダグラスの父親が、オクラホマとテキサスの州境で遺体になって見つかったのだ。最初に連絡を受けたとき、飲酒運転が原因だろうとウィリアムは予想した。
 しかし、ギャングが関わっていたと聞き、さすがのウィリアムも言葉を失った。

 ウィリアムは一時的に、ダグラスを従業員用のキャビンからマクブライト邸の客室に移動させた。ひとりにさせておくべきだとは思えなかったからだ。

 最初の数日から……葬儀が済むまで、ダグラスは時々ひと粒かふた粒の涙を見せた以外、平静を装っていた。もしくは、彼自身、どう現実を受け止めていいかわからなかったのだろう。

 葬儀が終わった日の夜、ダグラスは大きなダッフルバッグにいっぱいの荷物を詰めて、居間にいたウィリアムの元にやってきた。

「今までお世話になりました」

 ──この、潔さは。
 ウィリアムは日本語を学ぶ過程で知った武士道のようなものを、このテキサス生まれの少年の魂に見た。

「どこか行く当てがあるのかい?」
 ダグラス少年は首を横に振って、小さくつぶやいた。「なんとかなります」

「そういうわけにはいかないんだよ、ダグラス。君はまだ未成年だ。頼れる親戚はいないのかい?」
「いません」
「ああ……ご両親は駆け落ちだったと聞いた。そのせいかな」
「おそらく……。もしかしたら探せばいるのかもしれませんが、頼りたいとは思えません」
「ここに──わたしの元に残るのは嫌なのか?」

 ウィリアムはできるだけ平静に聞いたつもりだった。しかしダグラスは下を向いて肩を震わせた。

「ど……どうやって? もう従業員の息子という肩書は使えない。僕じゃまだ給料は貰えないし……そうしたら……」

 泣いていると気がついたのは、フローリングの床に涙の染みがいくつも広がったからだ。九歳のダグラス・ジョンソンは大粒の涙を流して泣いていた。
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