二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
枕元に回ってきたダグラスが、ウィリアムの背中を押して上半身を持ち上げる手伝いをしてくれた。その動きはプロそのものだった。それはそうだ……当初、ウィリアムが反対したにも関わらず従軍したダグラスは、コンバット・メディックになって帰ってきた。
ウィリアムが九十九歳にして心臓発作を起こしたにも関わらず生還できたのは、その場にいたダグラスが正しく応急処置をしてくれたからに他ならない。
まったく……。
なにがどう未来に繋がるかなど……そのときになってみなければ、わからないものだ。
「ウィリアム……」
『春子さん』
ウィリアムは日本語を選んだ。
この美しい言語にウィリアムは、春子に惚れるのと同じくらいの愛を感じている。時間はかかったが読むことも書くこともできるようになった。
この春の終わりから春子といくつか手紙を交わし合ったとき、春子は英語を選らび、ウィリアムは日本語で返信するという奇妙な図が誕生した。
お互いこんなことで、会えないあいだもどれだけ相手のことを想っていたか、表現し合っていたのだろう。
『君は変わらない。綺麗なままだ』
『大袈裟ね……。目が悪くなったのかしら』
『確かに目はもう良くないよ。お陰で今の君も……十九歳の頃と同じに見える。歳をとるのも……悪いことばかりじゃない』
『もっと近くに……あなたを見せて』
春子がそう願うと、ダグラスのすぐ後ろにいた乃亜がそれを英語に訳して伝えた。
ダグラスは春子を抱き上げると、乃亜がベッドを整えるのを待つ。春子はダグラスの手によってウィリアムのすぐ隣に座った。
ふたりは抱き合った。
少なくとも、九十九歳と九十七歳ができる限りの力を振り絞って、互いをきつく引き寄せた。
『会いたかった』
それ以上はなにも言えなかった。多分、それ以外になにもなかったから。
『わたしも……会いたかったです』
春子は答えた。