二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
春子の声にすべての記憶が蘇ってくる。
ウィリアムがはじめて春子を目にしたのはある夏祭りだった。
いまだ戦争の傷跡が深い港町の祭りは慎ましいものだったが、人々の礼儀正しさと、たとえどんな小さなことにさえ感謝を忘れない様子に心を打たれていた。
それらを小馬鹿にして笑う同郷の仲間も多かったが、ウィリアムの目にはこの土地の人々が敬意に値するものに映ったのだ。
だからじっくりと祭りの様子を観察していた。
すると、ふと目についた少女がいた。いや、女性か……。数人の同じ年頃の女性たちと一緒に、呑気な調子の太鼓と歌に合わせて踊ったり笑ったりしていた。春子は小柄だが姿勢がよく、日本人にしては大きな瞳がひと目を惹く。くすんだ赤のモンペを着ていた。
視線を離せなくなった。
どうやらそう思ったのは一緒にいた仲間も同じだったようで、春子たちに声を掛けようという算段が相談されはじめた。
ウィリアムはそういった軽率さが嫌いだった。
敗戦国を占領にきた自分たちが、現地の女を抱いてなにが悪い? ──そんな考えにはとてもではないが同調できないでいた。自分たちはただ偶然そういった境遇の星の元に生まれてきただけで、同じ人間である。
だからウィリアムは日本の女性に手を出す気は一切なかった。
ましてや、恋に落ちる気など。
しかし──
仲間のひとりが勝手に春子たちの踊りの輪に声を掛けに行ってしまった。もちろん日本語などできないから、最初は手こずっていた。
そこに春子が突然、かなり重いアクセントだがしっかりした声で、英語を喋りだした。
他の女たちはウィリアムの仲間に媚びるように腰をくねらせたり、逆に怖がって逃げ腰になっていたりしたが、春子だけは妙に堂々としていた。
どうも彼女たちが踊っていた囃子は大勢で盛り上がるものらしく、あなたたちも一緒にどうですかと誘っている。というか、そう誘っているらしい友人の言葉を訳していた。
感心してその様子を遠くから眺めていたウィリアムに、ふと春子が顔を向ける。
仲間が、あいつも誘ってやろう、的なことを言ったのだろう。
どういうわけか春子はパッと満面の笑みを浮かべて、ウィリアムに向かって走ってきた。
春子は息を切らせてウィリアムの前までくると、彼の手を取った。
「あなたも、どうですか? 一緒に、おどりましょう!」
単純だと笑ってくれていい。
その笑顔に……屈託のないまっすぐな瞳に……すべてに。ウィリアムの人生は変わった。