二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~



 記憶の波から浮上すると、ウィリアムは腕の中で肩を震わせて泣いている春子を抱きしめた。

「ダグラス……お前たちは少し席を外してくれ。少しのあいだでいい」
 ダグラスは少々躊躇したが、しばらくすると納得して、乃亜の肩を抱くと部屋から一緒に出ていった。

 長年ウィリアムが使ってきた寝室は二階にあるが、今は年齢と体調を配慮して一階にある小さな客室に寝起きしやすい高齢者向けベッドを入れていた。
 大きな窓があり、外が広く見渡せた。

「泣かなくていいんだよ」
 ウィリアムは英語に戻してささやいた。
「ええ、でも……」
「どんな道を……通ったのだとしても……わたしたちは今……互いの腕の中にいる。それを忘れないでくれ」
「ふ……っ」
「愛していたよ。ずっとだ……ずっと君だけを想っていた。それが……わたしの人生の中でたったひとつの真実だ」

 春子はおそらく、わたしも、と言ってくれるつもりだったのだろう。
 しかしウィリアムは春子の唇に人差し指を添えて、しっ、と先を遮った。

 どんな経緯があったにせよ、彼女にはかつて夫があり、その間にできた子供がいる。ウィリアムの人生のように単純な一本線ではないのだ。

「いいんだ。君はここに来てくれた……それだけでいい」
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