二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
『この河辺の静けさが好きだ。僕のように荒野で育つと、静寂に安堵を感じるようになる。場所も、ひとも』
ある晩、ふたりで静かに川縁を歩いていて、ウィリアムがそう言った。
いつもできる限り簡単な単語を使ってゆっくり喋ってくれる彼にしては、妙に早口で、いくつか耳慣れない言葉があった。ワイルダネス?
とりあえず、ワイルド、とあるのだから、自然と関係があるのだろう。
春子は港町育ちで、水豊かな日本の自然しか知らないから、あまり想像はつかない。
『わたしも、ひとは静かなひとが好きです。街は、賑やかな方がいいけれど』
ウィリアムは小さく笑った。
『じゃあ、俺は静かにするべきかな』
また早口。
まるで春子に聞いて欲しくないみたいだ。でもこれは理解できた──言葉としては。
ただ、その真意は?
『あなたも静かですよ。米兵さんにしては』
春子も、歌うようにコロコロと笑う。
ウィリアムはなぜか頭にのっている軍帽を被り直して、喉にものが詰まったような乾いた咳払いをした。
『ありがとう』
彼は英語でそう言ったあと、日本語でアリガトウ、と繰り返した。そして、
『希望を持っても、いいのだろうか』
そんなことをささやく。
──きっと希望は存在した。ふたりで紡げる未来が、この世界の果てのどこかで待っていた。
ただ、そこに手が届くかどうかは、また別の話だったのだ。