二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
大きな手にクイッと顎を掴まれて、上を向かされる。
怒りに満ちた表情のダグラスが乃亜を見下ろしていた。このまま呑み込まれてしまうのではないかと思うくらい、彼の瞳は感情的だった。
そしてその感情とは、決してポジティブなものではない。
「そ、そんなつもりは……。ただ、現実を知りたくて……あなたに失礼のないように……」
「そして親父に妻がいれば、遺産が手に入らないかもしれないから?」
「そんな! だから、それは違うって何度も言って……!」
おそらく、ダグラスはもっと酷い言葉を乃亜に向かって吐き出したかった。でも彼はグッと歯を食いしばって肩で息をしながら、しばらく無言で乃亜を見下ろしていた。
乃亜も逃げられない。
逃げる場所なんてない。
「これは言うつもりはなかったが──親父を侮辱するなら、これだけははっきりさせておこう」
ダグラスは、耳を澄ませてやっと聞き取れるような低くて掠れた声で、静かに告げた。
「俺は親父の養子であって、血の繋がりはない。九十九歳の今日まで、彼に女の影はなかった。一度たりとも」
大きく瞠目して、乃亜は「え」という声を漏らした。
「裏切ったのは君達の方だろう? 『ハルコ』だったか……。いくら親父が許しても、俺は許さない。それを覚えておくんだな」