二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 ポツリと独り言をつぶやいて、床に置いておいたバッグから曽祖母の手紙を取り出した。
 ソファに座り直すと、じっと封筒を見つめる。

 ──ウィリアムはずっと独り身だった。この牧場に「春」の名をつけて、他の女性の影は一切なく……。

「俺は許さない、か……。うん、でも、そうなっちゃうよね……」
 曽祖母とウィリアムが離れ離れになってから実に八十年近くが経っている。その間、少なくとも乃亜の知る限り、ふたりは一度しか顔を合わせていない……それも一瞬だけ。
 曽祖母は結婚してひ孫までいるのに、ウィリアムはおそらく、そんな彼女を思い続けて生涯独り身で、家族は養子のダグラスだけ。

 ウィリアムを父と慕うダグラスが、春子とその子孫の系譜を恨めしく思ったとしても、それはごく人間的な反応なのだろう。
 だから乃亜は、ダグラスが多少自分にきつく当たってきても、一種の自然の摂理として甘受する覚悟をした。

「春子おばあちゃん……なにを書いたのよぉ……」
 乃亜は突っ伏して、曽祖母のしたためた手紙に向かって泣き言をつぶやいた。乃亜は手紙の内容を知らない。開封していいのはウィリアムだけだと念を押されたのだ。

 ──なんで今更なんだ、とダグラスは言った。
 おそらく彼は正しくて、お互い百歳に近くなった現在、いったいなにを告げる必要があるのだろう。

 たとえ一度は血の繋がった子を成した仲といっても、半世紀以上も会っていなかった相手に、地球の裏側にひ孫を仕向けてまで伝えたいことが……?

(でも……それはそれで……羨ましい、かな)
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