二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ウィリアムはもうそれ以上会話というものを続けず、静かに春子の唇を彼の唇で塞いだ。
ふたりの身体は、春子を下にして、外套を敷いた地面に沈んでいく。
宵とはいえ、まだ深夜ではなかったから、遠くから人家の喧騒が聞こえた。離れたところに掛かっている橋を、提灯を持って渡る人影が豆粒のように小さく浮かんでいる。
目を……開けているべきだろうか。
閉じたほうがいいの?
ウィリアムは瞼を半分伏せて、うっすらとしか目を開いていないのに、春子は彼の反応を見たくてたまらない。
正解がわからなくて、春子はただ求めるままに……そして求められるままに身をよじった。湯気がのぼりそうな熱い息が混ざり合い、互いの匂いまでがひとつになる。
うっすらと、曖昧な知識しかなかった行為なのに、欲する気持ちは止まらなかった。
春子のモンペも、ウィリアムの軍服も肌けて、腕や太ももに絡んでいる。すべてを脱ぎ捨てられる状況ではなかったから、ふたりとも大事なところだけをさらけ出した。
胸元。
下腹部。
そして、心。
ずっと静かだと思っていた川のせせらぎが、湿った地面を通じて聞こえてくる気がした。時々、ウィリアムは春子の名前を呼んだが、春子はもう息が上がるばかりでなにも答えられない。
ふたりの魂が繋がった瞬間、春子は体内を貫くその圧に首を仰け反らした。
「は……っ」
ぶわりと吹き出す汗が、肌を伝う。
春子の唇は、無意識にウィリアムの唇を探していた。まるで彼と口づけをしている間だけ、空気が得られるかのように。
「アイシテ……イマス」
自身のものを春子の最奥に穿ちながら、ウィリアムは荒い呼吸と共にそうささやいた。
「本当……に?」
ウィリアムは日本語で返そうと一語、二語、聞き取れない言葉をつぶやいたが、このような行為の真っ最中に、心の機微を表現できるほどの語彙はまだなく、すぐに英語に切り替えた。
『どうして……聞くんだい? もう何度も……伝えたはずだ』
春子は閉じかけていた目を見開いた。
『知らない、わ』
『月が綺麗だ、と……』
『え?』
『それが日本人にとっての、愛しているという表現では……?』
──ああ、もう。このひとってば。
どこでそんなことを調べてきたのだろう? 春子が月に嫉妬していたあの宵は、一体なんだったんだろう。
もしまだ十分に恋に落ちていなかったとしたら、この瞬間、春子の心は完全にウィリアムのものになった。永遠に。